[Review]S.T.A.L.K.E.R.: Clear Sky

タイトル: S.T.A.L.K.E.R.: Clear Sky
開発元: GSC Game World
パブリッシャー: GSC World Publishing
リリース日: 2008年9月15日
 
結論から言うと「全体でいうと悪くはないが、決して高得点ではない」ところに収束する。細かい話はいくつかに分けて説明していくが、前作の良かった点がスポイルされつつも、今作で新しく追加された部分でも面白いところ、便利なところが無いわけではないので、低くはなるがしっかり評価はできるというところに落ち着いてくる。

ストーリーが阻害される

エミッションという発端部分から発生している重要な出来事や、各 Faction 間の勢力争いや敵対関係など、様々な要素が入り乱れてこの世界が構成されているわけだが、それを味わうためにはまず前提条件として各派閥の主張や敵対関係の有無など、様々な点を理解しておく必要がある。各 Faction から依頼を受けたりすることにより、その背景が分かってきたりもするのだが、その時はそれで良くても、終盤どう転ぶかが分かりにくい。なので前作もしくは何度もクリアした人ほど、この要素を楽しめることになる。1周目でどうするかという話になると、徹底的に吟味するか、気になったところに加入する程度だろう。
そうなるとさあ所属はしました、というだけで済まずに、敵対勢力が定期的に襲ってきたり、頻繁にマップ移動をする中間点などで戦闘が発生する勢力同士であれば、移動すら面倒くさくなってしまう。もちろん武器を売ればお金になるが微々たるものなので、毎度届けに行くわけにもいかない。それにメインタスクからの寄り道になってしまうので、時間をかければかけるほどメインがどうでもよくなってしまう。所属時に装備品がもらえたりもするが、未改造なので改造費もかかってしまうため、ある程度の財力がないとやはり寄り道が必要になる。
またこの「お金を稼いで武器をアップグレードしておく」行為がほどほどだと、戦闘時に不利になりかねないので、弾道のフラット化や集弾性アップなどの改造を施しておきたくなる。高い武器はそのお金も稼ぐのが大変だし、武器によっては特定 Faction でないと改造ができないものもあり、加入団体によっては改造ができないケースも出てくる。基本的な武器であればどこでやってもできるし、安く上がるので、どうしてもケチケチプレイという感じは否めないが、拘らなければこのあたりはさほど時間をかけなくても良くはなっている
ただ、終盤になればなるほどアーマー改造や修理、新しく手に入れた武器の改造を必要とするので、お金は稼ぎたい。そうなると金稼ぎのための行動をとらざるを得なくなるので、重要な時期に来るとマップ移動などでイベントが飛び飛びになってよくわからなくなる。
 
さらに拍車をかけるようにエミッションイベントが発生する。これはマップ移動のたびに判定されているようだが、なんか爆風みたいなのが来るので屋内に避難しろというタスクが発生する。そのタスクは移動自体は近くの建物、という形で臨機応変なのだが、最寄りの建物が敵の基地だったりする場合、マップをいったん戻るなどの対策を取りたくなる。そして建物の中で数分間暇な時間を過ごすことになる。NPC はそのまま生きてるのに不公平だよとか思いながら、終わるまでを早める方法がないためフルで待つ。待ち終わったらまたマップを戻る。そうすると、おおっと!という感じで頻発することもあるので、とにかくうざったい。これは外す MOD とかを最初に入れてもいいかもしれない。酷いときは「序盤の夜、当たりにくい武器で見えない敵と戦い、ショットガンで奇襲される」などの即死イベントと化すので、あまりにあまりすぎて投げたくなったことを告白しておく。

なんでプレイヤーは死ねるのにNPCは外でのんきにソーセージ食ってんだよ!

と、「プレイ中定期的に暇になる」「同じマップの往復が辛い」「各 Faction の良し悪しによってプレイ環境が変わる」。最後は欠点というかやってみないとわからないという点からマイナスにしたが、プレイごとに所属を変えればリプレイ性を高めることは可能。ただその際には各勢力で敵が違うし、マップごとに対応も違うので、それぞれの対策を練らなくてはならないという問題もないわけではない。
マップ往復と Faction 数が多くて把握しきれない、エミッションで急に冷めるという点が、前作のストーリーをぐいぐい引っ張っていくあの力を失わせているのがマイナス。結局最後まで何の話をしているのかがよくわからなかったので、新しい試みによって失敗してしまったとは言えるだろう。

武器の改造や所属勢力事の争いは「楽しい」

ここだけははっきりと明言するが、この追加要素でかなり楽しみ方が変わった。1本はスコープをつけて制度重視のアーマー貫通弾メインでの運用、サブの1本はある程度ばらまいても大丈夫なように装弾数とリコイル軽減、というような使い分けを自分で選べるようになった。もちろん相応のお金は必要だが、後半では改造品が手に入ったり、改造がそこまで必要でもないスペックのものがあれば修理代と弾代で済むのでまあ許容範囲か。自分は最後のほうまで Akm 74/2 をフル改造で弾道をフラットにして使用していたが、同じような改造をしたはずの AC96/2 がなぜか全然着弾してくれなかったのでブン投げた。最終的には SGI 5k を使っていて、サブには常時 Vintar BC を前作同様使っていたのだが、これが改造しても当たんねーな!という感じがしたので、結局あまり使っていない。
Dutyに所属をしたので、スナイパーライフルの改造は受け付けてもらえなかった。そのためスナイパーライフル強いよな!というプレーにはならなかった。SGI 5kでも十分狙撃できたし、一人狙撃してもどうしようもないゲームなので、あまりこだわらない方が良い。所属するところによって良し悪しがあるというのは初回プレイでは比較しにくいので、拘りが無い場合「無かったこと」にして所属イベントを全スルーしてしまいがちなのはマイナスではある。対立構造などは前作と変わらないので、それを知っている前提とまでは言わないだろうが、ゲーム中で理解しておかないといけないのは辛い。一応敵対してさえいなければ、どの勢力からのサポートも受けられるらしいのだが、「イベント」「乱戦」「ついうっかり」という意図せぬ形での敵対が発生しがちなので、初回ほど避けにくい。
各種勢力の構造もはっきりしているため、このマップではあれとコレが戦っている、というのが指示やマップ表示でよくわかる。Dark valley では Freedom の本拠地があるため、常に激しい戦闘が行われている。プレイヤーが押し上げたラインもよく押し返されており、自分が絡んでいないときはメチャメチャ弱いやんけと突っ込みたくもなるが、自分が介入して戦況を変えたということがはっきりわかるので、稼ぎも兼ねて味方とドンパチやってみるのも一興である。関係ないマップでなら楽しみで終わるが、よく通るマップで敵が多い場合、例えば Bandit などはほぼすべてが敵なので基本的に湧いた人間とは戦闘になるそうだ。このあたりはストレスを発生させる要素ではあるだろうが、ある意味リアルだと感心もする。

周回向けの要素、周回をさせないシステム

プレイヤーの知識量によって、楽しみが増えていく構図は悪くないのだが、いかんせん通常の状態ではエミッションなどの影響で「繰り返し遊ぶのは苦痛」となってしまう可能性は高い。
少なくとも前作のように「シナリオを追って一気にクリアまで持っていく力」はないが、「戦闘は意味がないので避けた方がいい」とか「自分の立場がよくわからない」というマイナス点は無くなった。良かった点を全力で投げ捨てて、前作で良くなかった点を全力で直したような感じ。
なので、ちょくちょくある「素材はいいけど料理の仕方がまずい」系のゲームであるのは間違いなく、MOD によって人気を博しているのも頷ける。ただ、私は前作はそういうゲームだと思っていない。通常の状態でも十分楽しめるゲームで完成されていると感じているが、世間的にはこのシリーズは全てそういう扱いらしい。もちろん不満点もなかったわけではないが、グイグイと引っ張られてエンディングを迎えられるゲームに不満はそうそう出ない。ただ、今作はそうじゃない。特に選択が迫るたびに圧倒的に不利になってしまったり、損をするケースが多々あるため、そういうタイミングでもプレイは一度止まってしまう。さらにはエミッションや改造費稼ぎなど、行ったり来たりやプレイそのものが数分停止という最低のシステムはいかんせん擁護しがたい。そういうものが無ければメチャクチャ面白いはずなのに…と残念な気持ちにもなる。
こういう感じなのが、プレイして感じた Clear Sky の良いところと悪いところである。何度も語ってしまった点もあるだろうが、その点が本当に目につく点だということで勘弁してもらいたい。全体的にはバニラの状態でのプレイは別にいいから、シナリオ等を弄らない程度に MOD を入れまくってプレイしてしまっても問題ないと思う。初回プレイの意味合いがあんまりない、という観点に基づく意見だ。
総合的には悪くないゲームだよほんと。むしろ問題がこんなにあるのにプレイ感自体はそんなに悪くないのは世界観の構築と、一貫したプレイスタイルを実現しているからだろう。
 

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