[Review]プロ野球チームをつくろう!DS

野球シミュレーションを無性にやりたくなり、手元にあって程よく手軽なものから順にということで、「プロ野球チームをつくろう!DS」をプレイした。シリーズの中でもあまり評判がよろしくないというか、作りが雑なのではなかろうかという点が目につくのは確かである。

主な不満点を先に挙げておくと、

  1. FA等で異様に年俸が跳ね上がっていく
  2. 特定の変化球タイプが強すぎる
  3. FA・トレードがザル
  4. オート休養が効果を発揮してくれない
  5. 全く意味を成さない「ライバル球団」設定
  6. 気が付くと有名なOBでチームが染まり元チームの面影が無い
  7. 衰えが早すぎる

書ききれないほど「これ野球ゲームか?」と思うほどの設定が出てくるが、大まかに分けてもこのくらいはある。写真は全て実機直撮りなのでご勘弁願いたい。

手軽に遊べるプロ野球チーム経営ゲームではある

断っておくが自分は決してクソゲーだとは思ってはいない。足りない点がたくさんあるだけで頭を空っぽにして遊ぶには悪くないゲーム。コツを掴めばすぐに強くなるし好きな選手を集めてプレーすることもしやすい。ある意味では夢のオールスターゲームのような感じで楽しむこともできると言えばできる。ただし、ただしだが真剣に遊ぶとすると足りない点が目につく。そういう意味では世間の評判は正しい。

まずプレイヤーは元のチームから5人までを選んで引き抜き、新規チームに入れることになるが、その時点でチーム格差がかなり激しい。定番としては若いキャッチャーと先発か抑えの軸になる投手をチョイス。そして野手では二遊間の守備か長打力のある選手を残すと後々楽になる。あえてそこから外れて選択してもいいだろうが、ゲームシステムとの兼ね合い上特別な縛りプレイでもない限りお勧めできない。なお特別な思い入れでもない限り超A級の選手以外は5年目くらいでチームの主力からは外れることになる。

今回はオリックスを選び、金子・平野を軸に投手陣を固めた。まあ基本的にはどこを選ぼうが3年目くらいまでは勝てないチームになるわけだが、すぐに原型を無くすので思い入れのないチームのほうが遊びやすいかもしれない。ベテラン中心のチームだと初期チームを維持するだけでも資金繰りが怪しくなるためだ。

バランスはよろしくない

先述の問題点をまたなぞることになってしまうが、ゲームバランスは歪かつ雑だと思う。

例えば選手の能力を見ても

  • 長打力さえあれば活躍する
  • 制球難の投手は無条件で活躍しない
  • 特定のスキルが強すぎる(ゴロピッチャー・負けないエース等)
  • 二遊間の守備力とキャッチャーのリードで全てが決まる

等の露骨な調整があるので、好きな選手を選んで使うことがあまりできないシステムになっている。能力値の傾向によって既に活躍するかどうかが決まってしまうためだ。

長打力が高い王長嶋(別当)山本はともかく、吉田義男とイチローはシーズンでばらつく

巧打力がB未満でも長打力がB+あればスタメン起用で割と見られる成績を残すし、逆に巧打力がAあれば3割確定かというと全くそんなことは無い。むしろ俊足巧打タイプはなぜか低調に.230とかでシーズンを終えたりすることがある。守備面で絶対に起用したい吉田義男氏などはそのタイプにもろに入ってしまい、どうしてこんなに打たないんだろうと疑問に思いながらフル出場させなくてはならなくなる。逆に長打力がAあればシーズン30本くらいは打ってくれるので、チームの得点力という意味では巧打力は必要ないということになりがち。適当に取ってきた長打Aの外国人が50本打つのも茶飯事。

あっさり取れて最強クラスの西村

ピッチャーは制球力の数字が低い投手は例えレジェンド級の投手であろうと悲惨な成績を残す。というのもこのゲームにおける主な失点理由が「押し出しとホームラン」という2点に集約されるため。当たり前のように連続押し出しからの満塁ホームランという図ができるので、制球力が悪いというのはそれだけでダメなのである。制球が良くて変化球がT字型(スライダー・フォーク・シュート)であれば二桁勝って200三振を取る投手になるのだが、ここまでわかりやすいと何を思ってこうしたのかわからなくなるほど。またゴロピッチャーを持つ投手はホームランを打たれにくいのでわかりやすく強い。

二遊間を固めてT字型の投手を揃えろというのが安易なテンプレなのだが、実際そうしないと勝てないので仕方ない。また選手も使える使えないがはっきりしていて、即戦力は1年目から十分な成績を残すので、誰がやっても似たようなスタメンになる。これも仕方ない。たぶんこのゲームをやった人なら、「王長嶋と山本浩二は鉄板だよな」と言えばわかってくれるはず。このほかに吉田義男とツヅキ(イチロー)はほぼ固定で入る。強いが出現率が低いOBというのもいるわけだが、この手の超有名なのが毎回出てくるので、わざわざレア選手をチョイスする意味もないという。

登場する選手の少なさが悪い

1軍25人で全体で35人までという縛りの中で、毎年3人ずつ+トライアウトでOBとドラフトにかからなかったルーキー時代の「ゲーム中引退した選手」が複数人取れるチャンスがある。すなわち毎年4・5人はオリックス以外の選手が入ってくるということになり、トレードなども加味すれば5年目くらいからはよほどエース格だった人以外などはトレード要員かクビである。そんなことをしなくても衰えが始まる選手が早熟なら29歳、普通なら33歳、晩成なら37歳なので、大本からいる人は34歳を迎える年にはクビになる。トレードで一昨年ドラフトにかかったよね?っていう若手の有望株を適当なので取ってこれるので、基本ドラフト外でもドラフトをやっているようなもの。

これは…やべーだろってやつ

そうするとどうなるか。先述のようなテンプレメンバーが揃うということになる。ドラフトでも毎年目玉が取れて、トレードでも元目玉が獲得できるとあっては夢のチームはすぐに作れる。能力にAランクがあれば大体活躍するので、育成すら要らない松中などは本当に即戦力。で、こうしてスタメンがOBと引退して復活した選手で埋まるので、プロ野球界のバランスが大きく乱れることになる。先述のようにホームランが飛び交うのに2点台ピッチャーが量産される。WHIP指標でいうと名選手クラスなのに被弾しまくってえらいことになってたり、MVP級投手でシーズン30発は当たり前。

そして2軍にはそこには入れなかった連中が並ぶことになる。ここにはトライアウト組の数合わせがずらりだ。基本的に施設にスパを立てて回復力を高めると、毎週のように休養させる(オートでは絶対にやってくれない)と、まず試合中のケガも皆無になるほどがっちり守られる。なのでケガ人入れ替えの必要性が産まれない。スランプイベントが起こった時は下げておかないとまずいくらいパフォーマンスが落ちるので、そのとき以外2軍は全く意味を成していない。こういうところも野球シミュレーション感が一切ないところ。控えがまともに戦える能力にならないのが悪い。

もちろん2軍をガチメンバーでそろえてもいいが年俸が間に合わない。毎年活躍しなくても無条件で3割アップとかしていくので、うーんそろそろ1軍にも慣れたかな?という感じの5年目くらいから億に到達、何もしてない2軍選手でもそのころには2000万くらいまで伸びている。併用して1軍で起用するともっと上がるので幽閉しておかないと金欠になる。また契約更改システムと言えば聞こえはいいが、相手の要求するところにホイホイとサインをしないと全く取り合ってくれない。10万でも下げると烈火のごとくキレ出してもう一度話し合いになるというクソ仕様。これによってチームの主力メンバーが金食い虫になり、FAでは年間8億も払えませんっていうことになり離脱していく。その際には3年目で7000万のAIチームから放出されたのを1億円くらいで獲得すると補填ができるが、使い捨てシステムすぎるだろこれというのは否定できない。

こうして6・7年プレイをしているとどのチームも「レジェンドOB勢ぞろいのチーム」に入れ替え完了してしまうわけだ。ランキングとか見てても全く燃えないまたいつものかとなるだけのランキング。そして打者がそうなるとホームランが増える。投手が制球良くて球威もあるエースぞろいになると、ホームラン以外では点を取りにくいという先述の失点要因に収まることにお気づきだろうか。

セカンドが弱かったので、堅守のセカンドを入れてこの年優勝。

システム上の投打バランスと、レジェンド級しか出てこないドラフト制度のせいで、自動的にここに行きつくのだ。これが例えば出てくるのは無名のランダム選手がメインで、毎年の目玉に数人OBが混ざってくる!とかであれば、いろいろとやりくりをしつつ、ドラフトでいいのが引けた、トレードでマイナス点をカバーできた、外国人で今年は乗り切ろうというような流れを産み出せたはずなのだ。現実は「有名無名関わらずOB勢ぞろい」「スタート時点で現役だった名選手が新人として登場」の2パターンなので、活躍できない奴は取らなくてもいい。ダメなら外人のバリバリメジャーリーガーを取ってくるというスタイルになってしまう。外人の能力も獲得前にはっきりわかってしまうので、不足点に合致する外人を選べばいいだけなのだ。

編成の難しくなさをメリットと感じられる人向け

何でも取ってこられるということで、例えば巨人ファンが「王長嶋原のクリーンナップにキャッチャーは森、エースは斎藤江川西村健太郎とさらには上原」というドリームチームも組める。もちろん全盛期の時期が被っているわけではないので、強くなるというわけでもないのだが、そういうプレイスタイルも有りではある。実際、オートで回しているとOBの元居たチームに集まるらしく、ドラフトでも元球団の選手を3人取っていくケースが多い。それを利用して芽が出る前にトレードをやってしまおうという作戦で、何でもありの強いチームをつくるのが一般的でもあるが、こうすると勝てるチームが誕生する。

1周目では衰えない選球眼以外完璧な捕手炭谷

遊び方に差はあれど、設定を理解し、システム上こうすると強いというメンバーを入れつつ、残りは好きな選手を入れていくのが長続きさせる秘訣となるだろう。個人的には阿部健太を良くチームに入れる。能力爆発イベントがやたらめったら起こるので、トップクラスのOBで揃えるとこのイベントが起こってくれない変わりとして、一種のアクセント要員になっている。もちろん能力的にもさほど悪くない。現役で若く、当時期待されているタイプの選手はOBとの争いで割と生き残れるので、最初の頃からほぼ固定と言う感じで使うのがお勧めだ。

活かされない無駄設定が多々

ライバル球団とかいう無駄設定にも触れていなかったのでさらっと最後に書き記しておく。何かライバル球団だと勝手に宣言してくるチームがひとつあって、そこが毎年1回トレードを成功させただの優勝しただのの時に登場するだけで、別に実害も無ければ影響もないという無駄なシステム。年俸の高い奴を集めまくるので、最終的にはロートルだらけなのに全員年俸10億越えとかおかしなことになってる金満球団がある、くらいの認識でいいだろう。ライバル相手だから燃えるとか補正があるとかそういうことは一切ない。

また色々な野球にまつわるエピソードを元にしたアルバム収集要素などもあるのだが、基本的に意味のない自己満足でしかないものがほとんどである。魂のエース誕生!などは1・2年目に放っておくとなりやすく、10連敗時のピッチャーが能力爆発を起こすというもので、長期的になかなかおいしいイベントではある。3年連続Bクラスになった後、高ランクの監督を就任させた初年度では、キャンプで個別特訓を行った3人が魔術師チルドレンとしてこちらも爆発を起こす。これもチームを強くしようと思ったら即起こり見た人も多いもので、さらに有用であるのがポイント。

逆に、全く意味のないイベントというか、狙って起こさないと起きる気がしないものはどういうものか。例えば「月に向かって打て」という有名なフレーズを元にしたイベントを起こすには、「奇数年度に、規定打席到達&打率3割以下&長打B+以上&24歳以下の選手がいる状態」を満たすことでイベントが発生する。さらに、このイベントが起こった後の試合で、対象選手が長打を打つことで連続イベント「月に向かって打った!」が発生する。こういう「トリガーが既に奇跡なのに、試合で連続イベント」というのがやたら多く、半分しか埋まっていないというプレイヤーも多いだろう。特にひどいものでは、「2週目以降にシーズンのタイトルを複数獲得した先発投手がおり、他の選手がタイトルを獲得していない場合に発生。」という日本シリーズでお馴染みのアレである。T字型の投手を複数揃えていなければ条件自体は満たしやすいものの、連続イベントでは「その投手が日本シリーズで3勝する」という、現代野球ではあり得ない条件を満たして発生するものである。ほぼ育ち切ったエースを酷使して得られる見返りが「選手の制球、球威、精神力が上昇」というしょっぱいもの。おそらくほぼカンストした投手なので意味がない。

など、色々な意味で意欲的ではあるものの残念な仕様が多く、勿体ないと思えるのが、出来自体は悪くないという証拠のような気もするが、決してユーザーフレンドリーではないとも言える。そんな難しい立ち位置のゲームだ。

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