タイトル: Moonlighter
ジャンル: アクション, アドベンチャー, インディー
開発元: Digital Sun
パブリッシャー: 11 bit studios
シリーズ: 11 bit studios
リリース日: 2018年5月29日
概要
遥か昔に発掘された「ゲート」は異次元に繋がっており、その先には多数の通路やモンスターが潜む部屋が存在していた。このゲームの舞台となる街リノカは、冒険者たちがこの迷宮から持ち帰ったアイテムを売り買いする街として知られる。
プレイヤーはリノカ村の商店店主であるウィルを操作。英雄に憧れるウィルはダンジョンを冒険したいという願望を抱いている。危険だからやめておけと言われながらもダンジョンを進み、持ち帰ったアイテムを売買し、店の発展、ひいてはリノカ村の発展を目指す。
主な流れはダンジョンを探索し、アイテムを持ち帰って売却し、その金とアイテムをもとに新しい装備を作ってもらうかエンチャントを行い強化、そしてまたダンジョンを探索するというパターン。
ダンジョンパートでとれる行動は少な目で、通常攻撃と溜め攻撃などの武器ごとの特殊行動、そしてLトリガーでのドッジのみ。敵の行動のタイミングを見て回避をする、行動の隙を見て弱点を突くといった基本は抑えられている。
持ち帰ったアイテムを売るお店パート。値付けは適当にするというわけにはいかず、アイテムごとに適切な価格設定を求められる。その価格はそのアイテムの人気と、アイテム自体の価値によって変化する。同じアイテムを売りすぎると価格が下がり、あまり出回らないと市場価値が高まるが、この変化は誤差範囲のようなもの。客の反応を見ながら微調整して適切な価格にできたときの喜びはひとしお。
アイテムの価格はこの手帳に記録されていく。細かい価格は実際に売買しないとわからないが、全く分からない状態からでもここの順位で価格の類推ができ、未知のアイテムでも取捨選択が可能となっている。ダンジョンから持ち帰るアイテムの選別にも役立つ優れた手帳だ。
ものすごく丁寧に作られた薄味な作品
ゲームの要素は上記の物でほぼ終わりである。ダンジョンごとの差は敵の強さと出てくるアイテムの差でしかない。使う武器をレベルアップさせて、エンチャントを終わらせるとそのダンジョンでやることはほぼなくなる。ボスが倒せるのであれば次のダンジョンに進んでしまった方が、手に入るアイテムの額が一桁上がるので、手前のダンジョンで粘って必死に稼ぐ意味があまりない。大体数回探索したらほぼ終わりである。何より単調なので手短に済ませたいというのもある。
ショップモードもやることは適切な価格で並べるだけで、人気増減もショーケース(売れたモノの人気が上がるらしい)以外ではさほど効果は発揮しない。なので、一度いい価格を見つけてしまったらそれ以上やることがない。高すぎて怒らせたり、激安すぎるとウッキウキで買って帰ってくれるのだが、ここで気になる点が一つある。「なんで主人公だけはデフォルトで価値を知らないの?」ということ。
手帳は先代からの知識やなんやかやが詰まっているという言い訳はたつが、お客様は全て適正価格を知っていて、そうでなかったら買わないということが徹底されており、裏をかいたりはできない。従ってこの商売パートは単なる推理ゲームである。商売の手腕やプレイヤーのやる気などは一切関係ない。アイテムを持って帰ってくる時点で総額が決まっているに等しい。持って帰ってくる際にも小さいインベントリや、呪い効果によるアイテム取捨選択、解呪アイテムの使う先など様々なポイントがあるとはいえ、最終的には利益率の高いアイテムを選ぶのであまり意味はない。というより「値段順ソート」ができるので、本当に形骸化していると言わざるを得ない。
総合すると、複数の要素を同時にくっつけたものの、相乗効果などは特になくほぼ独立していて、魅力や面白さを上乗せできていない。もっと言えば宝箱からまとめやすい高額アイテムをどれだけ引けたかレベルの要素しかゲームの中核に絡んでこないのである。
だからといってやりごたえがないとか、面白くないというわけでもない。翻訳ミスなどもないし、ゲームの雰囲気やドットの雰囲気など、ビジュアル面なども高評価のひとつである。そしてなによりかなりライトなゲームなので、クリアまで進められるプレイヤーが結構いる(実績参照)。これはクリアまでのプレイで詰まったり、飽きてやめたりというようなゲームではないということを示している。その代わり、尖ったところもないので、これがこのゲームならではという点が体感でほぼなかったというのが残念なポイントである。ちょっとしたスパイスが足りなかったようだ。
他の要素も全くないわけじゃないが、陰が薄いもしくは必要がない系統ばかり。ほぼ損を出してくれる資産運用マンは論外。高値でダンジョン内の産物をいつでも買える商店も基本的には空気。鍛冶屋とエンチャント屋などは使えるが、使えるというより使わないといけないので、進行に必要なピースでしかない。そういう意味で最初のゲームの流れ以外の項目がほぼ存在しないのが、ゲームの単調さを高めてしまっている。
「この要素いる?」が多い
上記のアイテム価格が最初わからない、アイテムに呪いがかかっているので持ち帰る際にインベントリをかき回して最大限持ち帰ることができるように奮闘する、というのは果たして面白さに繋がる要素なのかという点に尽きる。これらの点は、人によっては楽しみ・チャレンジと感じられる人もいるかもしれないが、それ以外にもいろいろと何これ?と思った点は多かった。
トップクラスに要らないと感じられるのは店にたまに入ってくる泥棒である。何が怖いというと入った瞬間からコイツ泥棒というアイコンが出るほどにバレバレなのに、盗んで逃げていく場面でしか取り押さえることができない、そして取り押さえたからといってメリットは全くなく、改めてアイテムを置きなおして終わりである。というか置きなおす作業をさせられる必要性を感じないが、この店はワンオペなので全部やらなければならない。店を出るまでに捕らえなければいけないシステム上、現れたらレジに構ってる暇はなく、盗むまで近くにいないと間に合わなかったりもする。店にとって全くメリットがないのに頻発するのでたまったものではない。
あと泥棒とは別に、店が大きくなってくるとたまに鳥が飛び込んでくる。この鳥を捕まえないと客が微動だにせず、商売がまったくできなくなるので、絶対に時間をかけて捕まえないといけない。鳥がいなくなるとまた何もなかったように動き出すので、本当に意味がない。店を大きくすればするほどマイナスイベントが増えるので、逆にどんどん面倒くさくなってくる。メリットが売り場面積と装飾品ボーナスくらいしかない。
他にもなぜか最大規模の店になると客がアイテムを手に取った後に「?」の吹き出しを出して微動だにしなくなることがある。こうなるとこの応対するコマンドで動かしてやらないといけないので、これもいちいちレジから出てこないといけない。どうしてこんなに操作を妨害するようなイベントをたくさん盛り込んだのか意図がつかめない。リノカの街は無法地帯かつボケ老人が多くて人喰い鳥の脅威があるのだろうか。
いろんな部分で終始「よくできてはいるんだけど、何だろうなこれ」とテンションが下がってしまう感じの部分が見受けられてしまって残念なところがある。それを差し引いてもよくできた作りで問題も少ない。シナリオも最後になるとああなるほどなと、これまでのすべての話を納得できる形でまとめてくれたので、本当によく考えられた入門編のゲームという感じ。よくできているだけに、惜しいなあとも感じられる良作佳作一歩手前くらいの出来栄えか。
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