[Review]When Ski Lifts Go Wrong

タイトル: When Ski Lifts Go Wrong
開発元: Hugecalf Studios
パブリッシャー: Curve Games
リリース日: 2019年1月23日

概要

コンセプトとしてはシンプルで、リフトを建築し、客を殺さずにゴールまで導くことを目的としたパズルゲーム。どの状態なら死んでいるかというのは明記されていないが、頭から落ちたり頭をぶつけるなどで血を流したらもう駄目らしい。

ただ運びきるだけなら多少考えればルートは思いつきやすいものの、ボーナス目標として「1か所も壊れることなく運びきる」「規定予算以内」「ステージ中にあるメダルを取るルートで作成する」という3点を満たすことができればトロフィーが貰える。ランキングがトロフィー取得とそうでないものとでソートが可能なので、ちょっと卑怯だがどのくらいでトロフィーが貰えるクリアラインなのかというのが確認出来たりもする。クリアするだけなら、予算オーバーをしてしまってでもいいので、とりあえず頑丈なリフトを建築してしまえばいいし、そこから可能な範囲で削っていくという感じでトロフィーを狙っていくのもいい。

頑丈だがコストのかかる丸太と安価な木材を使い分けたり、リフトの車輪を2個並べて一つ当たりの負担を減らしたり、建築自体には理にかなった解決法が用意されているので、予算を気にせずクリアする場合やサンドボックスモードでは美しい建築を目指すこともできる。リフトロープも上から引っかけるだけでなく、下から通して急上昇させ、次は上から引っかけて緩やかに降ろすというような自由度?もある。人をぐるんぐるん回す謎リフトも作れたりする。(まずクリア不可だが)

プレイ感

一言でいうと思ってた感じと違う、に尽きるのだが、具体的にどう違うのかを考えてみると次の3つが厳しい。

割と大きめのランダム性

一人目は行けたのに…

そもそも物理演算パズルでそういう要素が存在していること自体がもう駄目だと思う。具体的にどういうことをもたらすかというと、一人目が突破できてやったー完成だと思っていたところに、後ろから来たやつがなぜかリフトから落ちてしまい失敗、といったクリア未遂が割と頻繁に起こる。逆に行けるはずなのに失敗したとなるケースも多い。一つの設計に対する解が一つではないというのはちょっと目的が分からない。

滑りたいんならリフトちゃんと掴めやこいつらホンマ

なぜこうなるのか、という理由だが、よくある理由のひとつがリフトのロープの柔軟性、もうひとつがリフトに乗るライダーのやる気のない動き。体感で一定でないと感じられるところがまず多すぎる。上の画像のケースでは、坂道を上る際にたまに手を放して逆走したりする。運よく登り切っても変なところで手を放して頭から橋に落ちたりする。角度がきついのかな、とかここは登れないのかなとか考えているうちに行ける場合もあるので、本当に基準さえつかめないことが多い。こういうランダム挙動がゴール手前で起こったり、二人突破ノルマのうち二人目で起こったりするからもう大変。

ぐにゃあ~~…

3人乗りリフトになるとこのたわみ方。ついでに言うと左右移動に加えて上下にも揺れているので、タイミングによって真上から木にストンと落ちて粉砕というケースまである。引っかかるだけなら突破の可能性があるだけマシな方というパズルゲームの常識を超えた何か。せめて移動パスくらいは一定にしろと言わざるを得ない。あとこの項には関係ないけどこの四角いリフトはちょっと触れるだけでしめやかに爆発四散する耐久性なので、この箱リフトは本当にイライラするステージになる。

多分メダルはこんなルートで取れるだろうと思うじゃん
どこ通ってんだよこいつ

既定のラインを通らないとメダルが取れないという話なのに、いかにも取れそうなルートを通らせようとするとめちゃくちゃ撓んでルートを通り過ぎてしまう。そして乗客が下の看板に触れてしまうことまである。なぜこういうことになるかというと、リフトロープは高低差があればあるほどたわんで緩くなってしまうんだと認識している。これは例えば障害物を避けるために高くすると余計に遭遇してしまう。具体的にどう解消するかというと、下のようにする。

この流れでメダルが取れてトロフィーが取れたという

高低差を減らすことによりロープがぐわんぐわん上下しなくなるので、移動パスが割と一定になるっていう寸法。こうやって解決できるならランダムではないのでは?と言われるかもしれないが、このマップにおいては建造物1個で済んだおかげで対処できたのであって、複雑に絡み合ってくると、高さを調整するだけで全建造物が壊れたり、そもそも障害物が避けられなかったり避けられたりするわけで、基本的にはランダムに上下して成功失敗が絡むゲームとなってしまっている。

リフト建築以外の操作シーン

なんでこんなことをトライ&エラーしなきゃいけないのか

そもそもストアページの説明では動画内でちょろっとだけ「controllable riders」として触れているだけで、こんなに操作させてくるとはとても思えなかった。さらに「設計を練り込んでもクリアできない場合は、乗客たちに華麗なスキー技術を披露してもらって目的地を目指しましょう。」とか書いてあるので、例えばジャンプ台を設置したら体制を整えて足から着地してくれるようなもんを期待した。ところがそれらの要素は全てプレイヤーに委ねられてしまった。真面目な話これを受け入れられるかどうかで、このゲームの評価がクソゲーになるかどうかが決まってしまう。

本当にちょっとならいいんですよちょっとなら。進行するにしたがって半分くらいをこれで占めるようになってくる。バイクや自転車なら操作というより頑丈な橋とジャンプ台建築をするんだな、という程度でマシなのだが、問題はスキーやボードの方。このタイミングで屈んでジャンプとか割と繊細な操作を要求してくるので、前提としてまずこれが完璧であることを求められる。そのせいで、「橋やジャンプ台がうまく作れたかどうかがテクニック次第でわからなくなる」ことに。一例として、ジャンプの高さが足りていない場合、「ジャンプ台の建築がダメだったパターン」と「ジャンプのタイミングだけが悪かったパターン」の切り分けができない。ジャンプ台はよかったのに直してしまって結果悪化、というケースを招きかねない。これが面白いと思える人はたぶんいないだろう。

操作はスピードを出してりゃいいとかそういう簡単なもんでもないのがまた問題。上の設計だと本当にそろーりそろーりと下るようにしないと、着地点の橋が壊れることがある。ジャンプする際にも適度なスピードで行かないとジャンプしすぎたり逆に溝に落ちたりと無意味に繊細な操作を求められる。飛び出した後にも姿勢を整えないと頭から落ちたりして死ぬので、橋は完璧でジャンプ台も耐久性バッチリなのにクリアできないというケースが出てくる。こうなるとお前ホンマにパズルゲームか?と言いたくなる。

オブジェクトの干渉

とにかく乗客のライダーにやる気がない。例えば普通の客ならこういう時足上げたり木を横に押したりして身を守ると思うが、足が引っかかったままリフトからはじき出されるまで何もしない。当然ながらこういう箇所が一つでもあると誰かしらが血まみれになってステージ失敗になるので、シンプルに高さを引き上げてやらないといけない。こういう何かが引っかかるケースは開始しないとわからないケースが割と多いので、やり直しの回数が必要以上に増える。根本的にロープをピンと張ってくれるだけで割と解消できるはずなのだが、残念ながらグニャグニャでランダム性があるのは先述の通り。

真ん中のリフトは始まった瞬間死ぬ

そして一番困るのがリフトの始発がプレイヤーが運ばせたいライダーたちのところでなく、ループの途中からスタートしている点が検証に置いてネックになることがある。上記のスタート前の画面で、リフトアイコンがつるされているものは、「この間隔でリフトが動きますよ」でなく「この位置にリフトを置いた状態からスタートしますよ」なのである。従って上記の設計でスタートすると、どこの設計部分にダメージがあってダメなのか、という部分を調べる前に、木に埋もれてリフトが壊れたりする。この干渉のせいでダメージが大きくなっていることに気が付かず、作り変える必要のないところを弄ってしまうなどのマイナスも起こり得る。

何がいけないのか

長々と不満点を語ってきたが、これらの3点によるマイナス点は「必要以上にやり直し・修正を発生させる」点に尽きる。建築的にはできていてもなぜか移動パスが変だったり、たまに失敗したり、負荷がなぜかかかりすぎて今回だけ壊れたりというギリギリ突破を許さないスタイル。リプレイ機能とかシェアとか正直やる気にもならない。クリアするだけで必死なのに綺麗な建築まで考えが及ばない。

大抵この手のゲーム(Turbo Dismountとか)だと失敗したときにゲラゲラ笑ってさあもう一回、という感じの魅力があるのだが、このゲームの場合割とため息に変わる。大半が「自分のせいじゃない」からである。最初からあからさまに壊れそうなダメ建築を作って、壊れた部分を補強していって、というシンプルな考え方でゴールに近づいても、到達できているかどうかが若干運というのは達成感に乏しい。単なるリフト面ならこれでよかったなというのは体感できるものの、操作が混じると本当にわからなくなる。

実質チュートリアルのルーキーマウンテンの完全クリア率が20%あるのに、次のステージを一通りクリアしたというレベルで1/3になる。その次のステージでは2.5%なので、相当数が1・2エリア、10ステージちょっとで脱落しているというのは、正直納得の数字と言わざるを得ない。カジュアルで簡単操作でリフトを作れてランキングを争えるという、この手のゲームの定番要素はキッチリ入っているのに、どうしてこうなったという気持ち。ライダー操作が別のゲームで、これが建築オンリーだったらここまでにはなってないと思う。

こうなんというかつまらないとか出来が悪いとかじゃないのが勿体ない。建築自体の自由度はそれなりにあるし、予算考えなければ見た目にも美しいものが作れるし、建築の微調整もなかなかやりやすいインターフェイスなので、全体的に見れば出来はいいと思う。ただそれを台無しにする感じのプレイ後の達成感の無さや必要以上のリプレイ微調整がネックになり、ステージによっては乗り物のための建築という感じで建築自体を楽しむ以外の要素が多いということが問題。つまりサンドボックスモードのようなプレイ感が通常ステージで楽しめたらいいゲームとして受け入れられたはず。

逆のパターンで、はなっからビークル操作がメインのゲームだったら「乗り物をうまく操るためのコース・ジャンプ台・着地点作り」という方向になり、一般的な橋づくりゲームのような感覚で遊べると思うのだが。ただその場合は他のゲームとの差別化ができないという問題もあるので、何らかの追加要素で橋をかけて通すだけのゲームとの差異を出さなければならなかったのだろう。現状それらが受け入れられているとは自分は思っていない。このページのレビューはあくまで個人の感想だが、褒めているレビューでも「物理演算なんかおかしくね?」に触れていたり、「楽しいけどやることが少ない」「難易度曲線がおかしい」くらいの表現が割と多い。否定レビューは概ねビークルと物理演算のランダム性について書かれているので、勿体ないほどの投げだし率に繋がってしまったのだろう。

何度も言うが仮にランダム性が無くなって、ビークル操作シーンが無くなって、建設技術を徐々にグレードアップさせていくようなゲーム性だったとしたら、紛れもない良作の区分に入るだけに、その辺で評価を下げてしまっているのは惜しい。自分もある程度期待してこのゲームを手に入れて遊んだだけに、もうちょっとどうにかならんかったんかという気持ちでいっぱい。現状のこのバランスだと、セールやバンドルの一部として買って、合わなかったら積む、くらいの扱い以外にはなれそうもないなというところ。楽そうなステージだけつまんでクリアしたり、サンドボックスで自由に遊ぶ分にはセール価格でなら十分元は取れるはず。

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