[Review]Immortal Redneck

タイトル: Immortal Redneck
開発元: Crema
パブリッシャー: Crema
リリース日: 2017年4月26日
※日本語化対応済

※タイトルに含まれる「Redneck」には貧困層の白人に対する差別的な意味合いを持つ用語で、かつては絶対に使ってはならないといわれるほどの言葉でしたが、現在ではそこまででもないという声もあります。ただ、このサイトにおいて使われている・この記事で使う「Redneck」についてはタイトルの一部・主人公キャラクターを指す言葉であり、特定の人種・階級などに向けての言葉ではないことをあらかじめ宣言します。

タイトルに反して真面目なスタイル

基本はストレートなアクションFPS

事故に巻き込まれたRedneckさんが不死身?のミイラ化して大暴れして、なぜそうなっていたのかを解き明かしていく。というあってないようなストーリーから始まる本作は、ジャンルを簡潔に表現するとローグライトFPS。具体的に要素の説明をすると、ローグライク的な要素はランダム生成マップ・死んだら獲得したアイテムや武器等を失って初期状態でスタートする点。ライト的な方は、死んだときに持っていたお金だけは残って、拠点でスキルツリーを資金を使ってアンロックしていき、キャラ強化をして進めていくというスタイル。Rogue Legacyをやったことがあるならイメージしやすいと思う。それ。

またプレイヤーは各種エジプト神の能力を得てパワーアップ(パワーダウン)することも可能。主人公の素の状態(レッドネック)でもメリット・デメリットが存在するのだが、意外にバランスがとれていて使いやすい。武器が4個持てる代わりにジャンプが強制的に1段階に引き下げられるアピスや、ステータス面で全部マイナスだが、得られるゴールドをかなり増やしてくれるハトホルあたりは稼ぎ回を行うなら頻繁に使うことになると思われる。特にハトホルはグラップリングフックの固有技を持ち、敵に急襲をかけたり離脱にも使えたり、試練部屋の宝箱にダイレクト接地などかなりアクロバティックに移動できるのでテンポがいい。

移動速度がかなり速めで、敵の攻撃も見てから回避ができるようなものが多いので、オールドスクールな撃ち合いを楽しめる。ただ、武器が3種(神の助力によって異なる)しか持てないのと、補充弾数は多いが所持できる最大弾数が少な目なことから、できるだけ無駄弾を使わないように気を付けつつ、敵を倒していくことになる。そして画面上部のバーが表す「今の部屋に残っている敵」を全滅させるとドアが開く。小規模なアリーナを繰り返して攻略していくという感じか。

強化・クラス選択がカギ

基本的に難ゲーである。最初のピラミッドだからと油断していたらいつまでたってもクリアできない。というのもランダム要素があるので、このボスに使いやすい武器はこれだなと思ってもそれを持っていけるタイミングが滅多にこなかったりする。得意武器があってもランダム効果でマイナスを引いていたり、考えられることはたくさんあるので、能力を高めておくことはボスを倒す早道となる。なので、敵を倒した後に出るゴールドを消える前にしっかりゲットし、道中では宝箱をしっかり開けていくという探索をして、みっちり稼いでツリーを埋めていくというプレイがどうしても必要になる。

難易度曲線はかなり歪というか、最初のボスファラオくらいならなんとかなる人も多いと思うのだが、最初のピラミッドの大ボスが実際やってわかったが本当に障壁として立ちはだかる。やり方がわかっていても適切な武器を持ち込めないので攻撃が効果的にならず、ボス戦中は基本的に回復不可なのでじり貧で負けるというのを繰り返した。この問題はたとえば最初からランチャー系武器を持っているキャラを使うなどで緩和することもできるが、その場合道中が厳しくなることも覚悟しなければならず、一長一短という形でプレイヤーに選択を迫る。このあたりのバランスというか各キャラの特徴づけは上手く行っているように感じる。

普段よく回復が得意な神を選択するので回復量増加は後回し、などプレイヤーごとのスタイルに合わせてスキル強化を取捨選択していくなどの戦略性もあり、「どうせ全部取るんじゃん」という中でも考えて振っていく必要がある。それ以外にもスキルに振らずお金を余らせて、ショップで巻物を購入して挑むスタイルもある。いい効果確定のほうは多少値が張るが、下手にスキルに振るより効果的に進められることも。

マップの作りは堅実

移動速度が速く、よじ登りもできてダブル~クワドロジャンプまでできて、ミニマップでドアのある高さも表示してくれているほどに親切な作りはもちろんのこと、マップ自体のデザインもなかなか秀逸。

ミニマップ上で表示されるのを見越してか、放射状の階段のモチーフや左右対称の綺麗な配置など、マップの見た目自体も良い。だが、本当に議題にしたいのはキャラクタによって「1回ジャンプしかできない」、巻物によって「移動速度低下・ダッシュできない」等々のランダムマイナスを考慮した作りになっている…と思う。2段ジャンプや低重力ジャンプで届きやすくなるとか、移動が楽になるという場面はあるのだが、それでなくてもほぼすべて、おそらくクリアに必要なエリアすべてにアクセスできるようになっている。もちろん探せば特定の場所で特定の能力なら追加で得られる(部屋の最上部に宝箱)みたいなものも稀にあるが、基本的なマップ移動においてこういうのが徹底されているのも珍しい。

ただ、そういうアクセスしやすい段差のパーツを主に使っている以上、周回を繰り返すゲームの性質も加わって「あっまたこれかあ」という感じの印象になってしまう。その中でやたらドアまで遠かったり、嫌な配置で敵が出てくる部屋を見ると辛くなる。同じピラミッド内では仕方ないかと思っていたら「3つのピラミッドで同じ部屋」が出てきたときはさすがにこう…ねえ。ただこれもプラスに考えると後半のピラミッドにおいては敵の攻撃力が高まるので、知っているギミックや構造をスムーズにクリアできれば消耗が防げる、という見方もできる。マイナスとは総合的に言えないラインではあるかと思うが、気になる人は絶対気になる点ではある。

あと細かな点として、ピラミッドは1Fほど広くて部屋数が多く、ラスト最上階はボスフロアのみとどんどんサイズが小さくなっていく。ピラミッドなのだから当たり前なのだが、ゲームシステムにちゃんと盛り込んでいるのもうれしい。マイティボンジャック以来の感動かもしれない。そしてこれがフレーバー的なものというだけでなく、「上層部に向かうほど探索する部屋がなくなるので、宝箱(武器や巻物)を入手する手段が減る」という難易度にきっちり反映させてきている。

ローグライクFPSにありがちな不満点はちゃんとある

周回必須

どの程度参考になるかは不明だが、実績に20回以内でクリアする「狂っている」というものがある。また50回死ぬ「慣れてきた」というものがあるので、想定では4・50回程度はチュートリアルなのだろう。1ピラミッドをそこそこ探索して7階層クリアするには大体1時間くらいかかるので、クリアを目指す場合にはゴールド稼ぎの周回を行うか、引きがいい可能性に賭けて同じピラミッドに挑み続けるかという話になる。もちろん強化しても簡単に行くわけではないのだが…。

1回のプレイで稼げる額はせいぜい数万、5万以上だと実績解除という高値判定なので、ある程度耐久や攻撃力を高めるにはかなりの回数が必要となる。クリティカル関係や移動速度などを上げずに、得られるゴールドを初期状態のまま全部戦闘ステータスに振ったとしても。

序盤のマンネリ感

このゲームにおいては、武器がどんどん出て入れ替えていくというシステムになっていないので、序盤だけではなく終盤まで付きまとうのだが、一応この項目に入れる。この手のゲームでは、基本的に最初は支給のピストルなどでぴしぴしと撃つところから始めて、クリアしていくごとにライフル系やら強化ハンドガンなどのアイテムを装備して充実していくことが多い。ということは、何度も周回していると、いつも見ている武器ばかり扱うことになってしまうので、銃を撃ちまくって倒すという爽快感があまりない時期が長い。

しかしこのゲームにおいては、違う意味でマンネリ化しやすい。なぜなら初期装備だから弱いということがないからだ。例えば初期からいるレッドネック選択時では、初期装備のピストルとショットガンは外す気が起きないくらいに安定した強さを誇る。特にピストルは威力自体は低いが、精度と散らばりの回復速度が相当に早い。さらにリロードも速いうえに持てる弾薬数もピストルとして多めと基本的に隙が無い。なので他のキャラでプレイ中でも拾えるならまず使うほど。これ1本で遠距離対策も可能なので、あとは近接用の武器という形になるが、ショットガンの威力が割と高めな部類に入り、懐に入れば爆発物級のダメージが与えられる。というわけで、初期武器で戦い続けるということになると、周回プレイがさらに退屈なものになる。ショップで買えるとかいくつかからどれかをチョイスみたいな、いろんな選択肢を試せれば違ったのだろうが。

武器や巻物を拾わないままプレイして初期状態を維持というのもプレースタイルではあるのだが、ゲームが用意している要素を使いたい、となったところでそれはそれで難しい。次の項目にある運要素が絡んでくるからである。

運要素の強さ

前提条件として「何もしなければプラマイゼロ」というのはあるが、システム全否定なのである程度は取得することを基本としたい。

敵を倒したり(超低確率)、宝箱を開けると高確率(確定ではない)で巻物が出てくる。その巻物の効果に上下幅がありすぎる。さらに上の画像の巻物を手に入れていない場合、どんなにマイナス要素のものであろうとも触れたら取得しなくてはならない。誤訳がちらほら混じっていて完全に把握できてはいないが、上の拒否権は「次以降の巻物全部取捨選択できる」なので、これを拾うとマイナスのものはとらなくてもいいが激レアである。拒否できない場合、「リロードが後回しになる」と書かれている「手動リロードが一切できなくなる」巻物や、移動速度が遅くなる・ダッシュが出来なくなるといった戦闘戦略に影響するものが大きすぎる。酷さのトップクラスは「今持っている武器以外失う」「武器が全てランダムで入れ替わる」あたり。

武器に至っては、拾うとしたら持っている武器と絶対に入れ替えないといけない。その武器の強さや使いやすさを知らない時にはとりあえず拾ってみるわけだが、それによって難易度が上がる可能性があるわけだ。ただ普段はそれすらできず、敵を倒したときに稀に落ちる(1%とかそれ以下とか)とか、宝箱からたまに(確定ではない)出てくるだけ。中身の強さとかどうとかより入手経路が確率だというのがプレイ中に結構響いてくる。特に武器が1本にされた後のリカバリ時。

確定で何かできるというのが、スキルツリーで一番上にあるやつで、「ピラミッドに入った直後にランダムで武器を1個貰える」だけ。有用な武器が出ればいいが、癖の強いものやカメラのようなネタ武器を出されるとどうしようもない。高い金額を出してもランダムということもあり、やはり初期の装備セットに落ち着くことがほとんど。たまーーに納得いく武器が手に入って有用度の低いグレネード系と入れ替わるくらいのもの。なぜ武器ストアとかが道中に出てくれなかったんだろうと残念になる。まあオールドスクールを謳ってるから仕方ないといえばないのだが…。

その他気になる点

敵の出現が遅い

動画で見せるのが一番と思って切り出したが、アリーナスタイルの戦闘というのもあるのか、敵は部屋の中に入ってドアが閉まってから生成される。移動速度も相まってさっさと前に出て中央付近に行ったりすると、あとから湧いてきた敵に遠距離から狙われていてダメージ、というようなケースが結構出てくる。それ抜きでも順番に敵が湧いたりするのでびみょーにテンポを阻害しているような気もする。

序盤の敵や被害の少ない敵ならまだいいが、無音でレーザーのようなものを溜めた後に撃ってくる敵や、弾を複数ばら撒く敵が近くに湧いたときなど割と致命的なダメージになる。シリアスサムのようなスポーン音をつけてくれたら上の動画のシーンなどもすぐに気が付けただろうに、全くないので事故りそうになったというケース。ラスト近辺でこれを食らった場合攻撃力自体も高まっているのでできればこういうのは起こり得ないように設定してほしかった。

武器・巻物入手済みリストなどがない

というより、「具体的にどういう性能・効果をしているのか」というのを確認する術がない。初期装備なら外で人形相手に試し打ちをすれば威力は見られるが、初期に持っていない武器などは、それを物差しにピラミッド内で敵に試すしかない。リコイルの大きさや火力範囲、爆発半径などのデータがないので、今拾おうとしている武器とどっちがいいのかがはっきり言ってわからない。

個人的にあまり好きではないハトホルのFourth of Julyが実はロケットランチャーを発射していて、小さな範囲ダメージを発生させて自爆もあるというのをなんかよく知らなかったりもした。花火かなと思ってた。そういう細々とした詳細データがないために、武器ごとの良し悪しから取捨選択に至らない、ランダム変更でがっかりという事態を生んでいる。

本腰を入れて、というスタイルでなくてよい(総括)

死が軽い、軽妙なトークのレッドネック、最近の強めのオンボードグラフィックス(680M/Arc 8core等)でも動く(であろう)軽快さ。セール幅も大きいのでライブラリに入れておき、空いた時間で30分一本勝負とかそんなノリで遊んで大丈夫なゲーム。最初のピラミッドなら適度なやりごたえと上手く行けばサクサククリアできるラインで、どうせ死ぬならたくさんアイテムを取ってからとか強迫観念に駆られることもない。前回のプレーが今回のプレーに大きく影響という要素もおそらくないので、貯めたお金は惜しみなく自己強化に使える。前回どこまでやったっけという進行を忘れてしまうありがちなプレイも特に問題にならない。1話完結型のプレイ感。

巻物や武器はたくさんあるのに、「自分の意思で好きなものを(いくつかの中から)を選ぶ機会」がないというのは戦闘バリエーションなどの面から残念だと思うし、スキルツリー上げ切ったらお金いらないじゃんというシステムな以上、何らかの店とかトレードの手段は欲しかったところ。

総合するとストレートなアクションFPSとしてみるなら撃ち合い自体は良くできていて楽しいが、小規模アリーナ戦闘や、部屋全体に配置される敵、時間差で置かれる敵など楽しくない要素とずっと付き合っていくことになるので、真剣にやりこまないくらいが一番ストレスなく触れると思う。基本ゲームデザインや戦闘は高評価を得られそうだし、ローグライト要素は他の武器をどんどん取り換えるようなゲームと違って最初から強いというシステムのおかげで、ローグライトの概念初心者の人でもとっつきやすい感じはある。まあ初心者に一発目に薦めるのがレッドネック主人公ってのも人としてどうなのよってなるけれど。

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